井出創太郎(IDE Sotaro)1966年東京都生まれ。1991年愛知県立芸術大学大学院美術研究科絵画油画専攻修了。1987年より銅版画を制作。近年は、銅版画を襖、障子の形式で家屋に宿す作品へと展開。
「相倉/その光と襖」(世界遺産合掌造り集落相倉旧山崎家)や「渡部家住宅その光と記憶」(重要文化財 渡部家住宅)、2008年から10年間続けられた「落石計画」(旧落石無送線送信局・北海道根室市落石岬)など、特定の「場」が積み重ねてきた時の記憶を掬いとりながら、自分の想いを重ね合わせ、寄り添う空間を作り上げています。
作品には身近にある草花が使われており、今回は主に紫陽花が用いられています。腐蝕液に版を入れ、時間の流れに伴い変化しつつある一瞬(刹那)をプレスして留める事で、時間と記憶の集積が幾重にも重なりあって作品として昇華されているようです。
作品には全て「piacer d’amor bush」という題がつけられています。「piacer d’amor(愛の悦び)」は幼い頃いつも傍らにあったイタリアの古典歌曲で、作家の記憶全般の暗号となっています。「bush」は、植物が芽生へ、茂り、枯れていく、流れ行く時間と繰り返し、めぐりゆく時間が表現されています。一貫して時間、記憶のモチーフで在り続けています。
本展では〈版と言葉〉の作品を中心に約40点を展示致します。幾つもの時の記憶が紡ぎだされた作品を黙読下さい。
01+版と言葉2021-a-1 2021年 545×790mm 腐蝕銅版画緑青刷り、写真製版
02+版と言葉2021-a-2 2021年 545×790mm 腐蝕銅版画緑青刷り、写真製版
03+版と言葉2021-b-1 2021年 545×790mm 腐蝕銅版画緑青刷り、写真製版
30+水瓶2020-a 540×540mm 腐蝕銅版画緑青刷り
31+水瓶2020-b 540×540mm 腐蝕銅版画緑青刷り
32+水瓶2020-c 525×470mm 腐蝕銅版画緑青刷り
art project
対話空間(茶室) 旧落石無送線送信局・北海道根室市落石岬
「光射の器/島の影」展 女木島 2017年